『風立ちぬ』の意味・感想まとめ「感動した!」「つまらない」

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画像は「風立ちぬ」公式ページのスクリーンショット

宮崎駿監督の長編ジブリアニメ「風立ちぬ」が2月20日の「金曜ロードSHOW」でテレビ初放送されます。「風立ちぬ」は実在したゼロ戦の設計者堀越二郎の生涯と、結核の美少女が登場する堀辰雄の「風立ちぬ」を合わせた作品。かつてなく賛否両論を巻き起こした作品であり、放送前から話題となっていました。

「風立ちぬ」は”大傑作”か、それとも”大駄作”か。ネットの反応と自分なりの感想を書いてみたいと思います。以降、ネタバレを含みますのでまだ見ていない方は見終わってから読むことをお勧めします。

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「感動した!」「つまらない」賛否両論

ネットの反応は完全に好き嫌いが真っ二つに分かれています。とりわけ上映当初、往年のジブリファンが「こんなのジブリじゃない!」と声を上げれば、かつてのアンチジブリ派は「最高傑作だ」と褒めちぎる。何とも奇妙な構図が作り上げられたのです。

ネットの意見としては、「最高だ。感動した!お金払って見る価値のある傑作」、「何と表現していいか、言葉が見つからない」、「どういう話なのか分からない」、「背景や風景がとても綺麗。飛行機と風と人。最後は爽やかな涙がするっと流れた」、「大人向き。子どもが見てもつまらない」、「そこら辺の恋愛映画よりよっぽど良い」「鹿野さんの棒読みっぷり半端ない」「鹿野さんが最後に良い味だしててはまり役」、「絶対1度は見てみるべき」などなど。こちらも完全に好き嫌いが分かれる結果となっています。

子どもには少し難しい内容ですね。また女性よりも男性の方が共感できるところがあるでしょう。一つの夢を追いかけたことのある男性の中には、二郎と自分のかつての姿を重ね合わせながら映画を観た人も多いでしょう。

美しさと残酷さを描いた作品・あらすじ

「風立ちぬ」公式サイト内で宮崎駿監督は、

自分の夢に忠実にまっすぐ進んだ人物を描きたいのである。夢は狂気をはらむ、その毒もかくしてはならない。美しすぎるものへの憬れは、人生の罠でもある。美に傾く代償は少くない。二郎はズタズタにひきさかれ、挫折し、設計者人生をたちきられる。それにもかかわらず、二郎は独創性と才能においてもっとも抜きんでていた人間である。それを描こうというのである。

と述べています。「風立ちぬ」は夢にまっすぐ進む美しさと残酷さを描いた映画だと思います。

一見すると二郎は良い奴でヒーローのように描かれていますが、実は人として大切なものが欠落している冷たい人間です。様々なシーンで彼の薄情さがにじみ出ています。例えば、妹の加代が訪ねてくるシーン。いつも加代との約束を忘れ、ひとしきり待たせた挙句、「ごめん、忘れてしまっていたよ」の一言で片付けてしまう二郎。加代はすでに二郎の薄情さを知っています。少年時代の二郎に笹取りに行く約束を破られているからでもあります。加代に「薄情者」となじられる二郎。そんな妹は、二郎が結婚後に、菜穂子が可哀想だと泣いて訴えます。二郎の菜穂子に対する態度からは妻を思いやる優しさが無く、薄情さが表れているのですが、二郎は自分が間違っていることに気が付きません。二郎はそういう人間だからです。

さらに二郎は、菜穂子のことが好きですが、それは単に菜穂子のルックスの「美しさ」が好きなのであって、心から愛している訳ではありません。最も二郎自身はそれを愛だと思っているのかもしれませんが。

二郎はとにかく「美しい」ものが好きなのです。飛行機は彼にとって「美しい」物なので、彼は美しい飛行機を作るのが好きです。焼き魚の骨に「美しさ」を感じます。菜穂子にかける言葉は決まって「きれいだよ」です。彼が美しさに対して情熱を傾ければ傾けるほど浮き彫りになるのは、彼の薄情さであり、人間の残酷さです。

菜穂子が、二郎と暮らすために山の療養所へ入院してからも、二郎は全く見舞いに来ません。手紙を書いたかと思いきや、その内容は「いかがおすごしですか?」と簡単なあいさつの後「僕は今こんなことをしてる」と自分の事ばかりを語ります。菜穂子の容態には関心が無いのです。

菜穂子はこの手紙で彼の薄情さに気が付いたのでしょう。また二郎は本当のところ自分のルックスが好きなのだということも悟ります。しかし菜穂子は真剣に二郎の事が好きなので、たとえ二郎が自分の「美しさ」に惹かれているとしても、構わないのです。残りわずかな日々を二郎と一緒に過ごすため、菜穂子は山を下ります。

二郎と菜穂子が結婚し、共に暮らすようになっても二人の時間はほとんどありません。仕事で忙しい二郎に対し、菜穂子は「いってらっしゃい」「おかえりなさい」と毎日声をかけます。二郎に美しい自分を見てもらうため、どこにも行かないのに毎日化粧をします。

この生活について二郎は「僕たちには時間が無いから、1日1日を大事に過ごしているのだ」と言いますが、この言葉には違和感を覚えます。本当に菜穂子との時間を大切にしたいなら、山の診療所に菜穂子を入院させ、週末に二郎が会いに行く事を選ぶはずです。余命幾ばくかの妻の為に仕事を辞めるという選択肢もあるでしょう。でも二郎はそういう事を1ミリたりとも考えていません。綺麗な妻に「いってらっしゃい」と送り出され、美しい飛行機を作り、美しい妻に「お帰りなさい」と迎えてもらう。それが二郎の「大事に過ごす」生き方です。菜穂子の容態や、二人の将来は関係ないのです。その証拠に、二郎は結核を患う妻の横で当たり前のようにタバコをふかすという暴挙を犯します。二郎の中で世界は自分の夢を中心に回っているのです。

ある日、忙しく徹夜明けで帰ってきた二郎が菜穂子の横で眠りにつくと、菜穂子は二郎の眼鏡をそっと外します。これは「美しい私を見るのはこれで終わり」だという菜穂子の心理を描写しています。結核が進行し菜穂子の美しさは限界を迎えます。病に苦しむ姿を見せてしまえば、二郎に嫌われてしまうでしょう。翌朝、菜穂子は嘘をついて外出し、山の診療所へ帰ります。二郎の記憶の中での自分は美しいままでいたいという菜穂子の最後の願いです。

菜穂子が帰った後、飛行機のテスト飛行中に、山の方へ風が吹いて、飛行機のテスト飛行は成功します。この時の描写の仕方は明らかに、菜穂子の命が尽きたことを表しています。

「風立ちぬ」という映画の主題と「生きねば」というキャッチコピーの意味はここにあります。夢をめがけてまっすぐに進んだ男が陥った罠。そのあまりに大きな代償。多くの人や妻の苦しみに支えられて好きなことを続けている自分。自分は生き続けなければならない。それこそが自分の使命だと。

周りの人を傷つけても、夢や「美しさ」を追求するためにはやむを得ない部分もあるのだという「残酷さ」を表現しきった作品だと思います。「風立ちぬ」は「美しさ」と「残酷さ」を描いた作品です。

宮崎駿監督自身を投影した作品

これまでのジブリ作品の中で、これほどまでに宮崎駿監督の嗜好が反映された作品はありません。もちろん「紅の豚」のミリタリー描写や「カリオストロの城」のクラリスなど、宮崎監督の趣味丸出しの映画はこれまでにもありました。しかし、「風立ちぬ」は堀越二郎を通して宮崎駿を描いたような作品です。駿の駿による駿のための作品と言っても過言ではありません。

宮崎監督の私生活は、二郎に投影されています。新婚なのに妻をほったらかし仕事に励んだり、病気の妻の横で平気でタバコをふかすその姿は、まさに宮崎駿監督そのものだといえるでしょう。監督も新婚当初、余りの忙しさに会社に泊まり込んで家に帰らないことが良くあったのだとか。後に奥さんは息子の宮崎吾郎さんに対し「お父さんは家庭を何一つ顧みなかった。何一つ父親らしいこともしていない。あなたは宮崎駿になってはいけない」と言ったそうで。ひどい話ですね(笑)

またこの映画の中で印象的なのはタバコを美味しそうに吸うシーンですが、宮崎監督はかなりのヘビースモーカーだと言われています。さらに二郎は裕福な家庭で生まれ、庶民が銀行の取り付け騒ぎなどで騒然としている時も、高みの見物と言った感じでしたが、宮崎監督も同じく裕福な家庭に育ち学習院を出ています。

このようにまるで自分を描くかのように、そして自己肯定するかのようにして出来上がった作品が「風立ちぬ」といえるでしょう。そして少なからず、宮崎監督と同じような生き方をしてきた人にとって自分を見ているかのような気持ちで見た映画だったのではないでしょうか。

音楽が非常に良い

「風立ちぬ」のサウンドトラックはおなじみ久石譲が手掛けています。今回のクオリティも大変高く、劇中の音楽が素晴らしいと評判です。メロディが素晴らしく、ギターで聞くと心地よく感じます。ネットでも「音楽と映像がとても綺麗」、「音楽が素晴らしい」、「サントラ欲しい!!」、「内容はともかくサントラは最高傑作」など絶賛されています。

また主題歌は松任谷由美の「ひこうき雲」です。この曲は1973年に発売された歴史的名盤と評されるファーストアルバム「ひこうき雲」のタイトル曲となっています。松任谷由美とジブリがタッグを組むのは、魔女の宅急便で「ルージュの伝言」「やさしさに包まれたなら」で共演して以来、約24年ぶりです。

こうして賛否両論を巻き起こした「風立ちぬ」ですが、個人的には傑作だと思います。決して一言では語りつくせない世界観と、観る人がそれぞれ自分なりの答えが出せると言う点で、非常に優れた作品だと言えるでしょう。今までのジブリとは少し違った側面がある映画ですが、これもまたジブリの一部として語り継がれていく映画になるのではないでしょうか。

「風立ちぬ」公式ホームページ

「風立ちぬ」のDVD、サウンドトラックはこちら

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