蔵王山が噴火した場合、影響はどの程度まで及ぶのでしょうか。被害程度の予測を市町村が公開しているハザードマップを元にまとめてみました。蔵王周辺地域にお住まいの方はくれぐれもご注意ください。蔵王山噴火の影響・被害は?
蔵王山に火口周辺警報が出される
4月13日気象庁は蔵王周辺火口域の周囲約1・2キロへの立ち入り規制を周辺自治体に促す「火口周辺警報」を発表しました。
また火口湖の「御釜(おかま)」周辺を震源とした火山性地震が頻発しており、水蒸気爆発の可能性が高まっていると見られています。
御嶽山噴火の記憶冷めやらぬうちに発表された火口周辺警報。もちろん今すぐに噴火する訳ではないかもしれませんが、蔵王山噴火についての正しい知識を身に着けておきたいですね。
いざと言う時に慌てないように、チェックしておきましょう。
蔵王山が噴火した場合影響は?
仮に「御釜」周辺が噴火した場合、主な影響は宮城側にありそうです。
上空の偏西風の影響により御釜の東側に影響が出ると考えられているからです。
とはいえ、過去には山形方面にも火山灰が降ったこともあるため、山形側も油断はできません。
では具体的にどのような被害が想定されるのか市町村のハザードマップを元に考えてみましょう。
蔵王山噴火の被害想定は?
蔵王山噴火の被害想定を各市町村が行っています。その中で起こる可能性が高いものから順に取り上げてみましょう。主に次の被害が予想されています。
- 噴石
- 火砕流・火砕サージ
- 降灰
- 降灰後の土石流
- 融雪型火山泥流
- 溶岩流・御釜の湖壁が崩壊することにより発生する泥流・岩屑なだれ
ちなみに市町村のハザードマップは過去の噴火を元に最大規模の現象を参考に設定しています。火口位置は「御釜」を想定しています。
では一つずつ被害の影響を確認しておきましょう。
噴石
参照:河北新報
噴石の被害は噴火が水蒸気爆発かマグマ爆発かによって異なります。現在考えられているのは水蒸気爆発のようです。
水蒸気爆発の場合
噴火口から半径1.2㌔の範囲に噴石が飛び散る可能性があります。蔵王山頂レストハウスはこの範囲に入っています。蔵王エコーラインにも影響があります。
マグマ爆発の場合
噴火口から半径3.5㌔の範囲に噴石が飛び散る可能性があります。蔵王温泉スキー場、蔵王ライザワールドスキー場、みやぎ蔵王スキー場などはこの範囲に入っています。
さらに噴石警戒区域として噴火口から半径4㌔の範囲がとられています。この範囲内では噴石が飛んできて大変危険です。人命にかかわりますので速やかに避難してください。
火砕流・火砕サージ
火砕流は火山灰や古い岩石の破片、軽石などの固体と火山ガスや水蒸気等の気体が混合して流れてくるものです。
固体成分が少なく、主にガスからなるものは火砕サージと呼ばれます。
かのポンペイを襲ったのはこの中規模の火砕流だと言われています。
蔵王山が噴火した場合この火砕流や火砕サージが起きる可能性が指摘されています。
上の図を見て頂くと分かりますが、主に御釜の東側を中心に火砕流や火砕サージが届く予想となっています。
火砕流や火砕サージの発生する可能性は低いですが、ひとたび発生すると高温・高速(時速100km以上)で破壊力が大きく命に係わる災害となります。
降灰
蔵王山噴火により心配されているのが、火山灰の降灰です。
偏西風の影響により主に東側(宮城側)に深刻な被害をもたらすと考えられています。その飛散範囲は広大で仙台市や仙台空港も火山灰の影響を受けそうです。
火山灰の降灰はかなり厄介です。
気管支炎やぜんそくなどの症状の悪化、下水がつまり逆流・洪水、電子機器の故障、車などの機械の故障などが起こります。さらに木造家屋の倒壊にもつながる大災害となる恐れがあります。
最近では気象庁による降灰予想が行われていますので、最新の情報に通じるようにしましょう。
降灰後の土石流
火山噴火後、積もった火山灰の上に雨が降ることで起こるのが土石流です。
火山灰と雨水がまじりあい、大量の土砂や岩を巻き込みながら、山を駆け下ります。広島で起こった土石流の被害は甚大でしたが、蔵王山噴火後、通常の雨でも同様の土石流が起こることが予想されています。
現在予想されている氾濫場所は蔵王町、川崎町に加え、山形側の上山市などでもその危険性が指摘されています。
川沿いなどには近寄らないようにしましょう。また被害が想定されている場所を把握しておき、非難するようにしてください。
融雪型火山泥流
冬季に噴火した場合ですが、噴火の熱により雪が一気に解かされ、樹木や土砂を巻き込みながら斜面を流れ下ります。
土石流と同じように平野部で甚大な被害を及ぼす可能性が有ります。とくに蔵王山は降雪が多い山ですので冬季の噴火では気をつける必要があります。
溶岩流・御釜の湖壁が崩壊することにより発生する泥流・岩屑なだれ
さらに可能性は低いと考えられていますが、蔵王山に関係して予想されている被害にはこのようなものがあります。
「溶岩流」は、マグマが火口から流れ出る現象です。大昔は頻繁に生じていましたが、約10万年前に発生したのを最後にその後発生していません。
「御釜の湖壁が崩壊することにより発生する泥流」・「岩屑なだれ」は、噴火や地震が引き金となり、山体の一部が崩壊することにより発生する現象です。これらの現象は、他の火山現象に比べ、起こる確率は小さいと考えられます。引用:山形県蔵王山ハザードマップ
参考:宮城県蔵王山火山防災ハザードマップ、山形県蔵王山ハザードマップ
いのちを守る対応を
蔵王山が噴火した場合に考えられる影響や被害想定についてまとめましたが、実際には想定外のことも起こりえます。
想定外の現象が発生した場合,想定されている区域外でも被害を受ける可能性があります。実際の噴火では,噴火の状況に即した対応が必要です。
御嶽山並みとも考えられている蔵王山の噴火ですが、私たちの想像をはるかに超えた大災害となるかもしれません。水蒸気爆発なら浅間山の噴火程度で、噴火口から数キロ程度に噴石が飛ぶ程度で麓にはさしたる影響はないかもしれませんが、マグマ爆発の場合、麓にも甚大な被害が出ることが予想されます。
しかしこうして事前に対策を講じることが出来ますし、気象庁による警報も発令されています。山体膨張や火山性微動に注意しましょう。
万が一噴火した場合は、落ちついて命を守る行動・対応を心がけましょう。